手仕事の質は、道具の質で決まる。そう頭では分かっていても、つい妥協してしまうことはありませんか。
私自身、レザークラフトを本格的に始めるにあたり「道具は良いもので揃えよう」と決めていました。しかし、糸切りバサミに関しては手芸店で「高級」と書かれていた600円のものを購入してしまったのです。
結果的に、この選択は失敗でした。レザークラフト特有の「蝋引き糸(ロウ引き糸)」の壁にぶつかったからです。
今回は、より確実な切れ味を求めて辿り着いた最高級品「庄三郎」を含め、手元にある4種類の糸切りバサミで検証を行います。
検証に使用した糸:エスコード麻糸(中細)

今回の検証には、レザークラフトで定番の「エスコード麻糸(中細)」を使用しました。そのままの状態と、しっかりロウを引いた(ロウビキ)状態の2パターンで、その「逃げにくさ」と「切り心地」をチェックします。
【結果発表】4種の切り比べ一覧

| エントリー | 普通の状態 | ロウビキ後 | 切り心地の感触 |
| A: 30年前の裁縫セット品 | ❌ 逃げる | ❌ 逃げる | バチン(力が必要) |
| B: 最新の裁縫セット品 | ❌ 逃げる | ❌ 逃げる | バチン(力が必要) |
| C: 600円の御絹はさみ | ◎ スムーズ | △ 硬い | ロウビキ後は「バチン」 |
| D: 最高級 庄三郎 | ◎ スッ | ◎ スッ | 常に「スッ」と入る |
検証1:汎用裁縫用糸切りバサミの限界(A・B)


30年前の糸切りハサミ(A)も、最近の糸切りハサミ(B)も、驚くほど糸が逃げます。刃先で捕らえられず、糸が滑ってしまうのです。一発で切ることは叶わず、2〜3回ほど「刃同士を噛み合わせる方向」にグッと力を込め直して、ようやく「バチン!」と千切るように切れました。
検証2:糸を選ぶ「高級」ハサミ(C)


600円の御絹はさみは、ロウビキなしならスムーズ。しかし、一度ロウを引くと途端に牙を剥きます。糸が硬くなった分、刃に抵抗が生まれ、切るたびに「バチン」と力を入れる必要があります。数回のカットなら耐えられますが、長時間の作業では指が痛くなりそうです。
検証3:道具の概念が変わる「庄三郎」(D)


庄三郎は別格でした。ロウビキの有無に関わらず、糸を挟んだ瞬間に「スッ」と刃が入ります。余計な力を込める必要がそこまでありません。「切る」という動作が、作業の邪魔をせず、ただ流れるように終わる。これこそが、私が求める「美しい道具」の機能美だと実感しました
考察:この違いは何なのか



答えは刃の噛み合わせにありました。A,Bは常に刃と刃が面でくっついており硬い糸を切ろうと閉じると刃が開いてしまいます。(左写真)
C,Dは刃と刃の合わせに角度がついており点で接する状態。カットする箇所に点で力が入るため逃げずにカットできるようです。(中、右写真)
ただしCは中間から先端にかけて接するが根本に関しては接していない状態でした。Dは根本からしっかり接しており非常にクオリティが高いものであるのが一目瞭然でした!!また刃の厚みと研磨の角度も違いますね!
【備考:当初は「カッター」で十分だと思っていたけれど】
実は、レザークラフトを始める際、「専用の糸切りバサミは不要ではないか」と考えていました。
カッターであれば、革の縫い終わりのキワ(ギリギリ)を狙って刃を当てることができ、精密なカットが可能です。しかし、実際に運用してみると以下のストレスが浮き彫りになりました。
- 革を傷つけるリスク: 糸だけを切りたいのに、常に「革の表面まで切ってしまわないか」と極度の緊張を強いられる。
- 無駄な神経の消耗: 数百回、数千回と繰り返すカット作業において、この「注意を払う」コストは無視できない。
結果として、「革を傷つける心配がなく、片手でスッと完結する糸切りバサミ」の方が、圧倒的に利便性が高いという結論に至りました。道具に余計な気を使わなくて済むからこそ、作品そのもののクオリティに集中できるのでのではないかと思います!




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