以前の記事の最後に「雪駄の底が剥がれた」と書きました。
公園でお花見しながら歩いていたら、後ろからランナーの方に「すみません、落ちましたよ」と声をかけられて。振り向いたら、私の雪駄の底をご丁寧に届けてくれていました。恥ずかしかった……。
その後、反対の雪駄の底も剥がれ。15年間お世話になった雪駄が、ついに天寿を全うしたわけです。
「新しいアイテム買ったらまた報告します」と書いたので、約束通りご報告です。
嫁に教えてもらったお店へ
「せっかく買い替えるなら、ちゃんとしたものを」と思っていたところ、嫁から「コレド室町テラスに良い草履屋さんがあるよ」と教えてもらいました。

行ってみると、菱屋カレンブロッソという店舗がありました。落ち着いた木調のディスプレイに、草履・バッグ・和装小物が並んでいます。女性向けが中心ですが、メンズラインもしっかりある。
店員さんがとても丁寧に対応してくれて、お世話になりました。
菱屋カレンブロッソとは
菱屋は大阪・船場に本拠を構える履物メーカーです。江戸時代から続く履物問屋の流れを汲む老舗で、カレンブロッソはそのオリジナルブランド名です。
代表的なプロダクトが「カフェぞうり」シリーズ。ざっくりと言えば、現代の街中で着物を着て歩くことを本気で考えた草履です。
カフェぞうりZETTAとは何か

もそすごくは着心地の良い草履「カフェぞうり」の最大の特徴は、底面にビブラムソールを採用していること。
ビブラムソールはもともと登山靴や作業靴に使われるゴム底素材で、グリップ力と耐久性に優れています。従来の草履はソールが薄く、濡れた路面や石畳でかなり滑りやすい。着物姿でヒヤッとした経験がある方は少なくないと思います。カフェぞうりはその問題に正面から向き合った設計です。

今回購入したのはカフェぞうりZETTA メンズ No.2121〈プリズム8ブロック・ストーン〉。
天素材で悩みました——PVCか、牛革か
同シリーズには、天(足が乗る面)の素材違いが複数展開されています。
私が悩んだのは、「PVC(塩化ビニル)」と「牛革型押し」の2択。
見た目の質感では牛革のほうが好みでした。革好きとしては、使い込んで育てていける素材のほうが圧倒的に惹かれる。
ただ、店員さんからこう教えていただきました。
「カレンブロッソの商品の中で、一番滑りにくい天素材はPVCなんです。」
雪駄が滑って底が剥がれた、というのが今回の買い替えのきっかけです。となれば、ここは素直に実利を選ぶべきだな、と。
PVC(塩化ビニル)を選択しました。

革好きとしては少し悔しいですが、毎日の街歩きで使う道具は「使えてなんぼ」です。滑る草履は、革の風合いより先にストレスになる。これはデザイナーとして正直な判断です。
すげについて、知っておくべきこと
店員さんが最も丁寧に説明してくれたのが「すげ」の話でした。

すげとは、鼻緒を台に取り付けること。そのきつさ(すげ加減)が履き心地を大きく左右します。
カフェぞうりシリーズで特に重要なのが、男物はオーダー時にすげ位置を指定する仕様で、一度すげた後に調整ができないという点です。
台を貼り合わせた構造上、購入後の調整や鼻緒のすげ替えは受け付けていないとのこと。オーダー時に「きつめ」「少しきつめ」「普通」「少しゆるめ」「ゆるめ」の5段階から指定する必要があります。
なお、今回は店舗在庫からの購入なので、既存のすげ加減の中から選ぶ形になりました。オーダー品の場合は3〜5週間ほど納期がかかります。
自分の足の甲の高さや幅広かどうかを店員さんに伝えながら選ぶのがよいです。「最初は少しきつく感じても、2〜3回履くうちに鼻緒が足に馴染んできます」と教えていただきました。
素材スペックまとめ
購入した商品の素材を整理しておきます。
| 部位 | 素材 |
|---|---|
| 鼻緒 | 御召(正絹) |
| 天(足が乗る面) | PVC(塩化ビニル) |
| 台 | EVA(エチレン酢酸ビニルコポリマー) |
| 底 | ビブラムソール |
| 台の形状 | 小判型・ブラック |
鼻緒に正絹の御召を使っている点がこのモデルのグレード感を支えています。御召は先練り糸を使う絹織物で、独特の光沢としなやかさが特徴。台のEVAは軽量でクッション性があり、長時間歩いても足への負担が少ない素材です。
箱を開けたとき

「菱屋謹製」と朱字で刷られた、シンプルな灰色のボール紙の箱に入っています。
余計な装飾がなくて、潔い。職人仕事のイメージを簡潔に伝えられる梱包だなと感じました。プロダクトデザイナーとして、こういう「過剰にしない」デザインは好きです。
最後に
まだ履き始めなので長期的なことは言えないですが、選んだ理由は明確です。
ビブラムソールは現代の街歩きに合理的な回答を出しています。天素材PVCは見た目の革らしさより滑りにくさを優先した、実用の判断。すげ調整ができない構造は制限でもあるけれど、だからこそ最初の選択が大事になる。
「道具と長く付き合う」というスタンスは、草履でも変わらないなと思っています。育てられる素材じゃないぶん、使い込むほどに足に馴染んでいく変化を楽しみにしています。
使い込んでいく様子はまた書きます。ではまた。
※ 素材・価格・すげ仕様等は菱屋カレンブロッソ公式オンラインショップ(2026年4月時点)および店頭での説明に基づきます。
※「PVCが最も滑りにくい」は店員さんよりうかがった情報です。



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