着物の裁断パターンをCADで図解してみた|12mの反物が無駄ゼロになる理由

【思考(Design & Life)】

以前「着物は究極の平面構成だ」という記事を書きました。

書きながらずっと気になっていたことがあって。「実際に設計図に落としたら、どう見えるんだろう?」と。今回、CADで着物の裁断パターンを描いてみました。結論、やっぱりよくできていました。


反物って何?

着物の素材になる布のことを「反物(たんもの)」といいます。幅約38cm・長さ約12mの細長い布が、ロール状に巻かれているものです。

「幅38cmってかなり細くない?」と思いますよね。それがポイントで、この細さに着物の合理性が詰まっています。

ちなみに昔の規格は幅36cmでしたが、現代人の体格に合わせて37〜38cmが今の主流です。大柄な男性向けには42cmの幅広タイプも流通しています。伝統と思われがちですが、ちゃんと時代に合わせてアップデートされています。


着物は8枚のパーツでできている

着物を構成するパーツはこの8枚です。

  • 身頃(みごろ):胴体部分。左右で2枚
  • 袖(そで):左右2枚
  • 衽(おくみ):前の合わせ部分に足す布・左右2枚
  • 衿(えり):本衿と掛衿の2枚

これがすべて一本の反物から取れます。


廃材がほぼゼロになる理由

この図を描いてまず気づいたのが、余白がほぼないことです。

洋服は体の形に合わせて曲線で裁断するので、どうしても捨てる布が出ます。一方、着物の裁断はすべて直線。反物をまっすぐ切るだけで各パーツが取れるので、捨てる布がほぼゼロになります。

少し補足すると、身頃と袖は反物幅(約38cm)をそのままの幅で使います。衽と衿だけは反物を縦に半分に割って使います。つまり反物の幅という「素材の規格」と「着物のパーツの幅」が最初から対応するよう設計されている。これが無駄が出ない根本的な理由です。


平面の布が立体の着物になる理由

パーツがすべて長方形なのに、なぜ立体の着物になるのかというと「折る・重ねる・縫う」だけで形を作っているからです。体の曲線に合わせてパーツを複雑に切る必要がない。上の図でどこにどう使われるかがわかりやすいかと思います。

縫い方もほぼ直線です。ただし袖底の角だけは「丸み」というカーブがつくので、厳密には直線縫いのみではありません。それでも洋服全体と比べると曲線縫いの割合は極めて少なく、縫製の再現性が高い構造です。

この「ほぼ直線」という構造が「洗い張り」を可能にしています。全部ほどけば元の反物に戻るので、洗って仕立て直せる。何十年も使い続けられる設計です。


図面を引いてわかったこと

仕事で設計をするとき、素材の規格と製品の寸法をどう合わせるかはいつも悩むポイントです。

着物は、反物の幅と身体の寸法が対応していて、直線で切るだけで廃材がほぼゼロになり、ほぼ直線縫いで立体になって、ほどけば元に戻せる。おまけに現代人の体格に合わせて反物の幅も少しずつ広がってきている。伝統として固定されているのではなく、ユーザーの変化に対応しながら進化してきた設計だと思っています。

構造を知ると、着物の見え方が変わります。

このパーツたちがどう縫い合わさって着物になるか、もう少し深掘りしたいですが、それはまたの機会に。

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