「迷ったらこれ」ヘリ落とし選び|素人なりに納得できた道具をプロダクトデザイナー視点で考察

【育てる(Tools & Gear)】

レザークラフトを始めると、道具の多さに最初は戸惑います。なかでもヘリ落としは数百円から数万円まで選択肢が広く、何を基準に選べばいいかわからない道具の代表格です。

私はレザークラフトを始めてまだ日が浅い、完全な素人です。職業はプロダクトデザイナーですが、革を扱う技術については初心者も同然。それでも道具の構造を見る目だけは仕事で培ってきました。

今回選んだのは、クラフト社のフリントエッジャー ウォルナット #0(C28182)。最高級品には手を出していません。ただ、道具の構造を見ていくうちに「素人の自分がいま使うには、これで十分だ」と納得できた一本です。その理由を書いておきます。


そもそもヘリ落としとは何をする道具か

革を縫い合わせたあと、断面の90度の角を斜めに削り取る道具です。この工程を「面取り」と呼びます。

なぜこの一手間が必要なのか。私が実感している理由は主に2つです。

ひとつは耐久性。90度の角は力が一点に集中するため、使ううちに崩れやすい。面取りすることで力が分散し、断面が長持ちします。プロダクト設計でも「エッジの面取り」は耐久性向上の基本的な考え方で、これは革でも同じだと思っています。

もうひとつはコバ磨きの仕上がり。ここは少し補足が必要で、「磨き剤が均一に塗れない」というわけではありません。正確には、角が残ったままだとその後のバーニッシング(スリッカーなどで摩擦をかける工程)で工具が断面に均一に当たりにくく、磨き上がりにムラが出やすいというのが私の実感です。面取りしてから磨くと仕上がりが段違いに変わります。(特にヌメ革はエッジが立ちやすいので効果てきめんです!)

たった一工程ですが、これが作品の質感を大きく左右すると感じています。


クラフト社フリントエッジャーを選んだ理由

刃の鋼材:D2鋼という安心感

このエッジャーを選んだ最大の理由が、刃にD2鋼が使われている点です。

D2鋼は炭素とクロムを多く含む工具鋼で、硬度と耐摩耗性のバランスに優れています。革という繊維質の素材を繰り返し削る道具には、この耐摩耗性が作業の安定感に直結すると考えています。安価なモデルに多い鋼材と比べると、切れ味の持続時間が長く、研ぎ直しの頻度が少なくて済む。

素人なりに「長く使える道具」を選ぶ基準を考えたとき、刃の鋼材は外せない判断軸でした。最高級の職人向けモデルには及ばないかもしれませんが、この価格帯でD2鋼を使っているという点で、私には十分な納得感がありました。

もちろん切れ味も文句なしです。柔らかいヌバックでも問題なくエッジを落とせました!

先端に向かうカーブ形状の意味

このエッジャーの見た目でまず目を引くのが、先端に向かってゆるやかに弧を描く本体形状です。

クラフト社の説明によると、この形状は直線はもちろん、内Rや鋭角など様々な形状のヘリをきれいに落とすために考えられたものとのことです。実際に使ってみると、刃が多様な形状のコバに沿いやすく、力任せに押し込まなくても自然に角を拾ってくれる感覚があります。

また先端と裏側は、刃の跡が付かないよう手作業で仕上げられています。機械加工で量産される安価なものとは、ここに差があると感じています。素人の私には最高級品との違いを語る力はまだありませんが、この仕上げは丁寧であると感じました。

背面の溝が果たす役割

刃の反対側、背面には溝が設けられています。これはコバの角に溝をフィットさせることで、削る際に刃の位置を安定させるガイドの役割を果たす形状です。

荒らし用のエッジではありません。あくまで刃がブレないための設計です。内Rや鋭角のヘリをきれいに落とせるのは、このガイドによる安定性があってこそだと思っています。先端・背面ともに手作業で仕上げられているという説明に、使いながら納得しました。


なぜ#0(0.6mm)を選んだのか

番手が大きいほど刃が大きく、一度に削れる量が増えます。

#0を選んだ理由はシンプルで、初心者は削りすぎるからです。

刃幅0.6mmは削れる量が少ない分コントロールしやすく、「ちょっと足りないかな」という感覚で止められます。削りすぎた革は元には戻せません。財布やカードケースなど小物制作がメインの今の自分には、#0一本でほぼ対応できています。

厚い革でも小さいR面取りで十分だと思っている

これは完全に私の個人的な考えですが、厚い革を扱う場合でも大きい番手は選ばなくていいと思っています。

厚い革は断面にボリューム感があります。大きくエッジを取って丸くしてしまうと、せっかくの厚みが持つ存在感が損なわれる。小さいR面取りで角だけを落とし、断面の厚みはそのまま活かす方が仕上がりとして自然だと感じています。

#0の0.6mmという刃幅は、この「小さいR面取り」にちょうど良いサイズ感です。


7,000円〜を出した理由

正直に言えば、最初は「ヘリ落としにここまで出すのか」と思いました。もっと安いものでいいんじゃないかと。

ただ道具の構造を見ていくうちに考えが変わりました。D2鋼の刃、手作業で仕上げられた先端と背面、コバに沿うカーブ形状。それぞれに設計の意図が感じられる。

最高級品には手を出していませんし、職人レベルの使いこなしもできていません。それでも素人なりに「この価格には理由がある」と納得できた道具です。このブログのコンセプトである「長く使える美しい道具」に照らしたとき、私にとってはこの選択が合理的だと判断しました。

(Amazonでは販売されておりませんでしたので近似のものをリンクしてあります)


青棒で定期的に刃を整える

写真に一緒に写っている青棒(バフ用研磨剤)は、刃の研磨に使います。革砥に青棒を塗り、刃を数回滑らせるだけで切れ味が戻るようです。

D2鋼は硬度が高い分砥石での研ぎは難しいですが、青棒でのメンテナンスは比較的簡単です。道具は使うだけでなく手入れして初めて長く使えるものになるので今後定期的に行っていきたいです。


【重要】届いたらまず確認|新品のオイル汚れに注意

これは私が実際にやらかした話なので、同じ失敗をしないために書いておきます。

届いた状態のエッジャーには、刃を保護するカバーが付いています。このカバーにはオイルが塗られており、そのまま革に当てると油染みが付きます。

使い始める前に必ずカバーを外し、刃全体を乾いた布でしっかり拭き取ってから作業してください。 新品の道具が届いて気持ちが高ぶる気持ちはよくわかります。

ただここで焦ると、大切な革に取れない油染みが残ります。。箱を開けたらまず拭く。ただそれだけでがすぐ使いたい欲求でミスを誘発するため注意が必要です!

まとめ

ヘリ落とし選びに迷っている方に、クラフト社フリントエッジャー ウォルナット #0をひとつの選択肢としてお伝えしました。

私はまだ素人で、最高級品を語れる立場にはありません。ただ道具の構造を見る仕事をしてきた目で選んだとき、この一本には納得できる理由がありました。同じように迷っている方の参考になれば幸いです。


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