着物は究極の「平面構成」。12mの反物を無駄にしない合理的な収納シーケンス。

【纏う(Wearing)】

着物は究極の「平面構成」。12mの反物を無駄にしない合理的な収納シーケンス。12mのロール材から生まれる、無駄ゼロの「平面構成」。

プロダクトデザイナーの視点から見ると、着物は驚くほど合理的な設計です。

全長約12m、幅約36cm強の「反物(たんもの)」というロール材を、一切の端材を出さずに使い切る。曲線による「立体裁断」を排し、すべてを「直線」で構成することで、身体という有機的な立体を包み込むのは洋服にはない知恵ですよね。

この記事では、そんな究極の平面構成プロダクトを、美しく管理するための「手順(シーケンス)」について解説します。

ちなみに、羽織も構造的にはほぼ同じシーケンスで収束できるため、今回は長着をベースに進めていきます。


着物を最小化する10段階のパッキング・シーケンス

床への全面展開(Deploy)

まずは着物を完全に広げます。デザイナーがデスクに新しい材料を広げたときのような、静かな高揚感があるフェーズです。ここで全体の構造を俯瞰し、大きなシワを払っておきます。

基準線の設定(Datum Line)

手前側(右身頃側)の脇縫い線を基準に、布を整えます。矢印の示す通り、おくみのパーツを内側へと倒す準備をします。ここがズレると、後の積層がすべて狂う「デタム(基準)」となる工程です。

襟元のフォールディング・ロジック

首の後ろ(衣紋)の処理です。ここはまさに「折り紙」。立体的な襟を完全にフラットな平面に落とし込むための重要工程です。外側に逃げようとする襟を、内側へカチッと折り込みます。

面のリセット(Surface Alignment)

左右の身頃を完全に重ね合わせます。裾から肩口に向かって一気に重ねることで、布を「面」として一致させます。半分に折る前にこの「フラットな積層体」を作っておくのが、シワを排する最大のコツです。

右袖のパッキング(On-Layer)

いよいよ「投影面積」を最小化していきます。まずは手前にある右袖だけを、身頃の上へと折り返します。一気に全部やろうとせず、まずは手前のレイヤーを確定させるのがミソ。

左袖の隠れた構造(Under-Layer)

ここがこのシーケンスで一番面白いポイントです。残った左袖は、身頃の「裏側」へと回り込ませます。図の点線のように裏へ逃がすことで、着物の幅が完璧な一本の長方形に収束します。

積層の断面を確認する

5工程・6工程が正しく行われると、写真のようなレイヤー構造になります。反物の巾を活かした見事なサイズ感。このサンドイッチ構造が、最終的なコンパクトさに繋がります。

2/3へのダウンサイジング

細長い長方形になったところで、裾側を1/3の地点まで大きく折り返します。私の着物の場合は見事に袖の長さの位置に来るため、袖に余計な折り目がつきません。

最終収束(Stacking)

さらに残りの肩口側を重ね合わせます。1/2(二つ折り)ではなく、あえて1/3ずつ積層することで、厚みが均一に分散され、プロダクト全体の平滑性が保たれます。

パッキング・コンプリート

完了。どこにも「遊び」がない、完璧なスタック状態です。12mの布が、余計な厚みのばらつきもなく見事に収束していく快感。これにてパッキング終了です。


結び:お作法を超えた「リセット」

「一般的なたたみ方」はネットでも書籍でも探せば大量にあります。中には指先の動きまで細かく規定されたものもあります。

しかし、デザイナーという視点でこのプロダクトを観察したとき、重要なのは「形式」ではなく「目的」なのではないかなと。

私にとってこの工程は、身体に合わせて立体化された布を、再び元の「平面構成」へと最短距離でリセットするための最適化シーケンスです。

一般的な説明とは少し視点を変えてみましたが、いかがでしたでしょうか。 「着物は畳むのが難しそう」と敬遠している方も、これは「巨大なパズルを最小限の長方形にパッキングするゲーム」だと思って挑戦してみてください。直線のみで設計されたプロダクトが、カチッと収まる感覚は、日本人の美的感覚と叡智に触れられる素晴らしい体験ですよ!(大げさな表現ですが本気でそう思います!)

システムを理解したら、次は「プロダクト」そのものへ。

ここまで「着物のたたみ方」という管理シーケンスについて奇妙な視点でお伝えしましたが、肝心の「中身」についても少し触れさせてください。

結局のところ私が、着物を始めるにあたって「何があれば外に出られるのか?」を等身大で試行錯誤した結果をまとめています。

いわゆる「お作法」に縛られすぎず、実際に使ってみて「あ、これは無理だ(必要ない)」と感じたもの、逆に「これは持っててよかったー」と実感したものを、今手持ちの着物セットを公開しています。

ロジカルな「たたみ方」の次は、私が実際に袖を通している「道具」たちのリアルなレビューを覗いてみてください。

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